野生動物の「擬死」に見る解放の道|身体の硬直は「震え」によって破壊される

先日、身体的な「ブロック」と感情の抑圧との関係性について、記事を書きました。

「身体のブロック」と「抑圧される感情」との関係|私たちが「生きる力」を失う理由

そもそも、私たちは社会生活の便宜上、全ての感情を表現するわけにはいきません。

たとえば、腹が立ったからと言って、見境なく人を殴っていてはまともに生活できないでしょう。

しかし、職場の上司に理不尽に叱責された場合などに、「殴りたい衝動」を必死で抑え込むと、肩に「ブロック」ができてしまいます。

ちなみに、「ブロック」というのは私たち自身を縛る「筋肉の鎧」のことです。

「殴りたい衝動」は肩を通じて外側に表現されるわけですが、だからこそ、「殴らないようにしないといけない」と思った場合、当人は無意識に肩をギュッと固めて抑えつけることで、自分を押し留めようとするのです。

とはいえ、一度や二度のことであれば、固まった肩も次第に緩んでいくものです。

しかし、こうした肩の硬直があまりに何度も繰り返されると、それは「持続的な硬直」となってしまい、簡単には解除されなくなります。

そして、この解除できなくなった「身体的な硬直」のことを、私は「ブロック」と呼んでいるわけです。

この「ブロック」の中には感情が封じ込められています。

たとえば、肩であればそれは怒りですが、この怒りは肩を硬直させることで抑え込まれただけで、まだ消滅したわけではありません。

こうした怒りは、当人の中で行き場をなくしたまま、ずっと残り続けているのです。

このため、ボディワークや呼吸法などを通じて「肩のブロック」が解除されると、奥に眠っていた怒りが噴出してきます。

当人は「かつて表現できなかった怒り」を再び感じ、それと向き合わざるを得なくなるわけです。

だから、「ブロックを解除する」というのは、よくある健康法やリラックス法などではありません。

むしろ、安易な気持ちで手を出すと、かえって危険でさえあります。

私が今執筆している書籍では、解放された感情についてどのように対処するべきかも書いていっていますが、そういった知識もなく「ブロック」を解除すると、むしろ苦しみが深くなりかねません。

ですので、決して遊び半分で「ブロック」をどうにかしようとはしないほうがいいと思います。

「自分の人生」を変えるつもりがないのであれば、「ブロック」には手を出さないほうが無難です。


また、感情の噴出は精神的な現象ですが、身体面でも「ブロック」が解除されると、あることが起こります。

それは、「不随意的な身体の震え」です。

そもそも、「ブロック」というのは身体を束縛する硬直なので、これが解除されそうになると、身体はそれに加勢しようとします。

自分を縛る鎖を食いちぎるために、身体も協力してくれるわけです。

この際に起こるのが、身体の「不随意的な震え」です。

なんで震えるのかと言うと、固まった部分を緩めるためです。

たとえば、自然界の動物の中には「擬死ぎし」というものをおこなう種がいます。

「擬死」というのは、いわゆる「死んだふり」のことです。

ある種の動物は、あえて自分の身体を硬直させて「死体」と見せかけることによって、自分を襲ってくる他の動物の追跡をやり過ごそうとするのです。

そして、もし追跡者をうまくやり過ごすことができると、「死んだふり」をしていた個体は、身体をブルブルと震わせて起き上がります。

これは、身体を震わせることによって、自分の身体組織にチャージされていたエネルギーを放出しようとしているのです。

そもそも、筋肉のような運動器は収縮することによって力を発揮します。

それは見方を変えれば「何かを握りしめること」であり、別な言い方をすれば、「筋肉にエネルギーを取り込むこと」でもあります。

これによって、その個体は一度「握りしめたエネルギー」を放出しないと、次の動きを取ることができません。

なぜなら、「既に収縮してしまった筋肉」は、一度緩めない限り「再収縮」ができないからです。

これは私たちの手と同じです。

私たちの手が何かを握りしめるなら、別なものを手に入れることはできません。

「これを手放したくない!」と思って握りしめれば握りしめるほど、当人は「不自由」になっていってしまい、「自分が握りしめているもの」によって深く束縛されるようになっていってしまうのです。

逆に、もし握っているものを手放すなら、その人は再び「手ぶら」になることができます。

つまり、持っていたものを放すことで、もう一度「自由」になれるわけです。

「擬死」をした動物においても、これと同じことが起こります。

そもそも、「死んだふり」をして身体を固めている限り、その個体は「生きること」ができません。

一度、自身の硬直を解かない限り、動き出すことはできないわけです。

それゆえ、まず筋肉組織の中にチャージされた(=握り込まれた)エネルギーを放出する必要があります。

そして、この「エネルギーの放出」を促進するのが、実のところ、「不随意的な震え」なのです。

実際、動物というのは、「擬死」をおこなう種に限らず、ジッとしていて固まった身体を解すために、全身をブルブルと震わせることがあります。

これは、固まった身体に蓄積していたエネルギーを放出することで、もう一度身軽な「手ぶらの状態」に戻るためです。

同様に、私たちが身体の「ブロック」を解除した時も、「不随意的な震え」が起こってきます。

別に何かが怖いわけでもなければ、特に寒さを感じているわけでもないのに、身体が小刻みにブルブルと震えてきて、それが止められなくなるのです。

しかし、それは決して「悪いもの」ではありません。

むしろ、身体が「握りしめていたものを手放す手助け」をしてくれているのです。

実際、身体は震えることでエネルギーを手放して、もう一度、身軽になろうとします。

それは、「自由」を求めている身体にとって、自然な反応と言えるでしょう。

しかし、もしここで震えを何か「悪いもの」であるかのように考えて抑え込もうとすると、当人は身体と対立することになってしまいます。

もし当人が「震えるな!とまれ!」と言って力ずくで抑え込もうとすると、せっかく身体の「ブロック」が解除されかかっているというのに、その「ブロック」をもう一度強化してしまうことに繋がっていってしまいます。

そうは言っても、いつまでもブルブル震えていては、生活に支障をきたすかもしれません。

そこで、身体と協力して震えをあえて増幅させ、積極的に「ブロック」を破壊していくためのワークが存在しています。

それは、バイオエナジェティクス(生体エネルギー論)の創始者であるアレクサンダー・ローエンが考案した、グラウンディングのワークです。

このワークでは、足元から「不随意的な震え」を誘発させ、それを増幅・伝播させることで、全身の「ブロック」を破壊していくワークです。

このワークをおこなうと、特に脚の中の「ブロック」がたくさん解除されるため、当人はゆったりした立ち方ができるようになります。

感覚的には、足裏がビタッと地面に吸い付いて、「地に足がついている感覚」がしてきます。

だからこそ、「グラウンディングのワーク」と呼ばれているわけです。

ただ、このグラウンディングのワークのやり方は、文章で説明するのが恐ろしく難しいです。

私も、このワークは生身の人間から直接学び、本からは学びませんでした。

ローエンの本も過去に何冊か読んだのですが、たぶん文章だけでは理解することができなかったと思います。

なので、もしもグラウンディングのワークを伝える機会があるとしたら、それは岡山での瞑想会の時くらいかもしれません。

「自分の足で立っている感覚」が希薄な人には効果的なワークなので、歩行瞑想の前にでもおこなうと面白いかもしれないです。


このように、「ブロック」を解除すると、様々なことが起こり始めます。

精神面では「抑圧していた感情」が噴き出しますし、身体面では「不随意的な震え」が起こってきます。

しかし、それらを適切に対処することで乗り越えられると、当人の生命力は増大します。

身体の中の「ブロック」が解除されることで、感情が抑え込まれなくなるので、当人は活き活きしてきますし、身体の詰まりが取れて呼吸が深まるので、単純に体内の酸素量が増大します。

このため、「ブロック」を解除すればするほど当人は「生物」として強くなっていき、呼吸が深まることで思考が沈静化して、瞑想状態にも入りやすくなっていくわけです。

ということで、「どうやって身体の中の『ブロック』を解除するか」について、今せっせと原稿を書いています。

興味の出た方は、完成を楽しみにお待ちくださいませ。

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